最近、90歳、100歳の人が書いた本の出版が珍しくなくなってきました。
『晩鐘』を読んで、母と同世代の人がこれだけの本を書くという事実に圧倒されました。
この本は、佐藤愛子が88歳~90歳にかけて、元夫である田畑麦彦の心奥を解明したいという思いで書いたものです。
結局この本を書き終わっても、目的は果たせなかった。
そして、それでもよいと作者が納得するための本だったのです。
人が長生きをすることが、幸せかどうかは私にはまだわかりません。
ただ、母と同年代の周囲の人は、いつの間にかいなくなっています。
母も長生きすればするほど孤独を味わうことになるのでしょうか。
強気の佐藤愛子さんでさえ、本に寂寥感が漂っています。
この本を読んであらためて思ったことは、人の心の不思議さと老人の寂しさでした。