2015年12月4日金曜日

『ロゴスの市』

今回も本の紹介です。



乙川憂三郎著『ロゴスの市』です。
男性の主人公は文芸翻訳家、女性の主人公は同時通訳。

翻訳、通訳という分野では、どちらも身近にいる職業の人たちです。

男女は三鷹にある大学の言語学科の同級生。

時代は「異邦人」が流行していた1970年代。

この男女が言葉と格闘し、苦しみながら一流の翻訳家と同時通訳になっていきます。

その過程で愛し合いながら、運命にもてあそばれ、孤独な人生を送る二人。

私にとって美しい文章というと、宮城谷昌光や葉室麟が頭に浮かびます。

でも、この作家の文章は、どこかに書いてありましたが、たしかに端正です。

文中で翻訳について印象に残った一文は、

「原文を見たまま考えると、どうしても英語の構造に縛られるから、翻訳するときは顔を上げる....」でした。