このシンポジウムで興味をひかれたのは、武蔵野美術大学教授、グラフィックデザイナーの原研哉氏の基調講演でした。タイトルは「エンプティネス」です。
「エンプティネス」という言葉を聞いたことがありますか?
別の言葉で表現すると、「空間、間、無、空白」というような意味になりますが、一言では表せないため、カタカナを使っているのでしょう。
講演の主旨は、日本のデザインにはシンプルなだけではなく、日本人が共有し理解できるエンプティネス(それぞれの人のどんな思いも受け止める間や空間)があり、これが日本文化の大きな底力となっている、というものでした。
どんな思いも受け止めるエンプティネスの代表は、屋代(社)です。
ただし、「エンプティネス」は日本の文化だけのものではありません。
日本人が好きな朝鮮の李朝の器にも「エンプティネス」の概念があるような気がします。
原氏がグーグルで「エンプティネス」について講演をした際に、グーグルの人も理解したそうです。なんとなくわかる気がしませんか。
抽象的概念の説明なのでむづかしいのですが、日本古来の文化の根底に、どのような思いも受け入れる「エンプティネス」があるということを、もっと日本人が考えて、大切にできたら世の中が少しやさしくなるかもしれません。